農家の庭についてお話しします。
コンバインで刈り取った生の籾は、今でこそ火力を用いた乾燥機で
乾燥しますが、55年前の記憶では筵(むしろ)の上に広げて乾燥して
いました。乾燥というより干すという感覚です。
「筵とは藁で織った厚いゴザみたいなものです。時代劇で死体に掛けて
あるのは一重のわらゴザ。ゴザを毛布に例えると、筵は敷布団並みです」
私の父は自家用の筵は専用の織機で織っていました。
たくさんの筵を広げて籾を干すところこそ農家の庭です。当地ではかど
(門)と呼んでいます。すべての農家はこの庭を持っていました。
土の上に筵をすぐ並べるのではなく、麦わらで編んだ長いゴザを敷き、
その上に筵を並べるのです。
庭だけでは足りないので、刈り終わった田んぼに切った稲わらを敷き、
麦わらのゴザをその上に広げ、さらにその上に筵を並べていました。
90センチ×180センチの筵一枚の上に1斗桶一杯の籾を乗せます。
私も1斗桶で運んだ記憶は鮮明に覚えています。
山になった籾は、柄振りに似た道具でまんべんなく広げたものです。
90センチほどの柄振りの刃がギザギザで、さぐり棒と呼んでいました。
貴重品だから捨てずに保存してあります。
デジカメが使えないのでお見せできないのが残念無念。
農家の庭はそんなところから面積を必要としました。
子供たちはシーズン以外はそこが遊び場でした。
かくれんぼ、缶蹴り、チャンバラ、相撲、パッチン(メンコ)
全てがこの広い庭で行われていました。
機械乾燥になってからは庭が必要なくなりました。
流行だったのでしょう、多くの農家が松やサツキを植えて庭にしました。
今では車庫に変わっている家も多いです。
続きは次回に。